外谷さんブデブデ日記(73)

田辺剛「ダニッチの怪」三部作を読む。ちと退屈。大力作だけに疲れる。これは田辺氏のせいではなく、原作がコミック化に向いていないのだ。つまり大したことが起こらないのである。ヨグ=ソトースの息子ウィルバー・ホウェイトリーにしても、異常な発育ぶりが目を引くだけで、行動自体は普通人とさして変わらない。物語がらしくなるのは、2巻目の半ばー大学に押し入ったウィルバーが、番犬に食い殺されて(ちと情けない)からである。ところがここも、凄まじい描写にも拘わらず、何処か類型的だ。最高の描き手を持ってしてもーこの点が想像力に訴える小説と、全て具体的にならざるを得ない漫画の差なのだがー人間の筆では異次元の生物を描きだせないのである。最大の見せ場ーヨグ=ソトースの不可視の息子がその姿を現すラストもその弊を免れてはいない。あれほど緻密かつ迫力たっぷりな描写さえも、平凡から逃れ切れていないのだ。
正直に言って長すぎる。こう感じるのは、田辺氏の思い入れが強すぎるためだろう。原作ではただの片田舎程度の扱いでしかないダニッチや名前がついているに過ぎない村人に対する過度の感情移入に、私はあまりにも日本人的な感傷を感じて、首を傾げざるを得なかった。この辺はアメリカの読者に聞いてみたい気がする。

外谷さんブデブデ日記(72)の補遺

えー、外谷さんの死期が近づいているとゆーのは、私の願望ないし冗談でありまして、御当人はついこの間、すれ違いざま悪態をついてきたゴロツキを六人ぶちのめして留置場。謝罪を要求してきたところをしおらしく話し合いの席につき、そこでもっぺんぶちのめして、意気軒昂に火を吐いています。

外谷さんブデブデ日記(72)

日本中の動物園から河馬さんたちが消え、警察は会議ひとつ開かず、外谷さん愛好家を自証する狛江市の某作家のもとへと急行、逮捕した。作家の自供によれば、外谷さんの死期が近づいているため、別れるのにしのびず、河馬さんたちを安楽死させた後、火葬場で灰にし、特殊な薬品を加えて、インスタント外谷の素を作るつもりだったという。気持ちは純粋だが、それは世界でいちばんやってはいけないことだったものか、以後、彼の行方は杳として知れない。
なお作家は発明家としても有名で、仕事場には棒高跳用のロボットが飾られており、名はトヤゲイ・ブブタだそうである。

no title

追捕:(71)のアィデアは、いしいひさいち氏の4コマから借用致しました。

外谷さんブデブデ日記(71)

ふと、銀行強盗を思いついた外谷さん。融資窓口で、メモを渡した。
「金を出せ」
融資係は書類に何か書き込み、隣の窓口へどうぞと、外谷さんに手渡した。
「担保物件ー外谷さん。キロ250円」

外谷さんブデブデ日記(69)

我がご贔屓-高畑充希主演の吸血鬼ドラマ「UNKNOWN」が終わった。役者陣はみな好演だが、シナリオがどうしようもない。また日本的お涙頂戴かよ。なんじゃこの種明かしは?視聴率を取るために、ヤイノヤイノ言われた結果だろうが、私はひと言ですむぞ。死ね、シナリオ野郎。しかし、充希ちゃんは達者だねえ。無理を承知で言うが、「カーミラ」を原作通りに演ってくれませんか?

外谷さんブデブデ日記(67)

昨夜、千葉で地震があった。ここだけの話、私と大学のOBには、「とうとうやらかしたか、外谷さん」だったのである。数ヶ月前、OB会へ出てみたら、皆が外谷さんの後ろでガヤガヤワイワイやっている。何事かと近づくと、あのでっかいお尻にレポート用紙が一枚張り付いていて、
「全国こー湾と市(除く横浜)かいめつ計画」
とプリントされていた。
「港湾都市壊滅計画」のこったろう。ハワイでのアロハ生活に慣れ切って、どんどん退化が進んでいると聞いていたが、字まで怪しくなって来たか。しかし、こういう陰謀を尻に張り付けてOB会に出てくるとは、どーゆー神経だ。ぶう。何かあったら、真っ先に自分が疑われるのは、一目瞭然ではないか。多分、全然意図的なものではなく、その辺に置いてあった用紙の上に、どすこいと座り込んでしまったのだろうが、そのまま気づかず出席するというのも凄い。しかも計画を実行に移したというに至っては、皆に読まれたとは知らずに、貼り付けたまま帰ったとしか思えない。今更だが何ちゅー女だ。なぜ公安に訴え出るOBがいなかったのかと言えば・・・あんたチクるかね?御礼参りがどーとかいう前に、アホでしょ?
極秘情報によると、昨夜、震源地の山中で、祭り囃子に合わせて踊ったり、四股を踏んだりしている太った女が目撃されているらしい。もうわかったよね。
狙いは勝浦、大網、旭あたりとされているが、真の目標は銚子だろう。嫌がらせに違いない。しかし、私はこの日記を書く手は弛めない。私的な苛めと思っている読者もいる(殆どそうだろう)が、わたしには外谷さんの楽しさ、面白さを伝える義務があるのだ。近々、世界へ発信する計画も立てている。何処かに学生時代のアルバムはないか。

外谷さんブデブデ日記(66)

爆笑問題のコントをみる。乗れない。大田が最近シリアスを意識して、実行中のせいもあるが、私的にはサンドイッチマンのせいだと思う。あの見てくれとギャクのはまり具合には、誰も勝てないのだ。客は怖いから笑わされ、芸人も怖いから脅される。頼むから、急ぎ大坂府警ネタをやっとくれ。

外谷さんブデブデ日記(65)

あくまでも個人的な腰痛の治し方

我が家には剣道の素振りに使う5キロの鉄棒がある。池波正太郎氏の「剣客商売」に、4貫(15キロ)の振り棒を2千回振れるまで、稽古をつけてやんないよーという台詞があり、5キロだと6千回になる。そんなの無理に決まっているから、取り敢えず100回を目指した。細かい事情は省略するが、30回で動けなくなった。脇腹が悲鳴をあげたのである。それから数年、持病の腰痛が外谷さんに毎晩踏んづけられてるみたいに悪化し、2ケ月ほど前頭に来た私は、逆療法だと喚いて、またも2千回に挑んだ。やけ癖であった。ただ、その辺のオッサンではないので、少し工夫することにした。頭上から振り下ろす際に、それに合わせて膝を少し曲げ、衝撃を緩和したのである。膝と腰への直接打撃を避けるための処置であり、回数を増やすのが目的だったのだが、オオー、左右10回ずつやったら、腰痛が9割方消えているではないか。しかし、勿論完治とは行かず、ひねったり、長時間歩いたりすると、すぐ元に戻ってしまうのだが、では10回と振り回すと、てきめん楽になる。床から起き上がる時、イテテテテと悲鳴をあげることもなく、ヨイショと立てるのは、正しく天国と地獄の差といいえる。鉄棒ありがとー( ̄0 ̄)/。

外谷さんブデブデ日記(64)

ご存じの方も多いと思いますが、本日2003年4月7日は?鉄腕アトム?の誕生日です。彼は今日、天馬博士の手によって、完成されました。ハッピーバースデー????拍手〜。

外谷さんブデブデ日記(63)

「友近/礼二の妄想トレイン」をチラ見。津軽鉄道の車内で、でっかいスルメを車内ストーブで焼いていた。うんまそー。わたしは烏賊に眼がないのだ。ディズニーの「海底二万」(54)でもオーディオ・アニメトロクスの大烏賊との死闘を見ながら、お腹がグーグー鳴って困った。烏賊の顔が外谷さんだったら、グーグーグーであったろう。
H・ラッセル・ウェイクフィールドの「ゴースト・ハント」を読む。中学生のころから名のみ高かった幻のホラー作家だが、唸ると同時に忘れ去られた理由もわかった。何度も紹介されながら、我が国でもパッとしないまま終わるだろう。

外谷さんブデブデ日記(62)

「ユージュアル・サスペクツ」を見る。謎が謎を呼ぶアクション・ミステリーで、アカデミー脚本賞を獲ったそうな。見終えて首を捻った。要は五人の犯罪者による現金強奪もので、彼らを操る謎の人物の正体は
誰か?というのが肝である。しかし、アメリカの観客はこれ程単純かつ素朴な人たちの集まりなのであるか?正体など、巻頭のアクションが終わったら、次の数分でわかっちまうではないか。これから見る人たちのために沈黙を守るが、この謎を解くのに、論理は必要ない。道理で行くのが正しい。
ある雑誌でラヴクラフトとクトゥルー仲間とアーカム・ハウスの特集を組んでいたが、私の名前がない雑誌も、作った奴ももぐりに決まっておる。ぷんぷん。

外谷さんブデブデ日記(60)

松本零士氏が亡くなった。85歳。出世作は?少年マガジン?連載の「男おいどん」。あまりにも不潔な下宿暮らしのため、サルマタケなるキノコが群生する部屋に暮らす若者を描いた青春マンガであり、クラブ仲間の間では、外谷さんの(後の)亭主と顔も生活も瓜二つだと評判であった。後に「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」の絢爛たる成功で日本漫画界のレジェンドななったが、私の記憶に鮮明なのは、松本あきら(明?)時代の作品である。「ララミー牧場」という大ヒットTV西部劇のコミカライズの面白かったこと。この人は大漫画家になると一発で分かったものである。ドギュウム、ドギュンという拳銃の発射音は、松本氏が発明したものだ。ちなみに前述の「ララミー牧場」のTV映画の人気がどれほどの物だったかというと、主人公の一人流れ者のジェス・ハーパーを演じたロバート・フラーが来日した際、羽田空港には10万人の少年ファンが押し寄せた。あまりの人気に、当時の内閣総理大臣-池田勇人はフラーと歓談の席を設けた。ちなみに、ビートルズ来日時のファンは3万人。席も無しである。
一方でこの当時の漫画界では珍しくないが、松本氏は少女コミックも手掛けていた。この資質はあのメーテルに象徴される。面白いのは、氏のSF嗜好はこの少女コミックの方に出ていることで、悪党を動物に変えてしまう指輪の持ち主は娘を探しに来たエイリアンだったりする。これは少年漫画だったかも知れないが、あの南極越冬隊が置き去りにした犬たちが、南極の地下に超文明を築いて人類に復讐するという?あまりにも大胆な(アンチョクだという言葉も出てこない)な設定の物語もあって、私は声を失った。松本氏の作品を求めたのが、少女コミック開眼のきっかけだったのかも知れない。当時少女コミックも手掛けていたもうひとりの天才がちばてつや氏であった。この分野の大先達たる手塚治虫、横山光輝両氏のことはいずれまた。
これは正しくイカれた妄想なのだが、松本氏にはウィリアム・ホープ・ホジスンの「異次元を覗く家」を描いて欲しかった。

外谷さんブデブデ日記(59)

P・スカイラー・ミラーというSF作家をご存知であるか?ま、余程のマニアでない限りあるわけはない。しかし、私には強烈な印象を残す、忘れられた、或いは知られざる作家なのだ。古い作家ということもあり、4編程の邦訳しかないし、作品自体もあまり話題にならなかったけれど、古典的タイム・トラベルもの「時の砂」と、堂々たる、そして不気味極まりない海洋モンスター小説「アウター砂州に打ち上げられたもの」で私の度肝を抜いた。特に後者はバラードの「溺れた巨人」と瓜二つの出だしだが、通俗的な面白さは100倍。暗い海中から現れるモンスターに私は震え上がった。前者は独自の理論でタイム・トラベルを可能にした若い科学者が、恐竜時代でエイリアンのお姫様を助けるが、追ってきたエイリアンに・・・というお話で、ラストの余韻が胸に残る。本国でも我が国でも間違いなくこれっきりの作家だが、短編集でも手に入ったら、コツコツ訳してみたいなあと思っているキクチせんせーなのであった。誰か持ってませんか?

外谷さんブデブデ日記(58)

昔のニュースを流す番組で、拳銃不法所持のやくざのマンションへ、捜査員が押し掛けた。みなお相撲さんみたいにごつい。ドアの前で、一人が
「こら、大人しく開けんか。いるのはわかっとるんやぞ。令状も出てるんや。さっさと開けんとドアぶち破って入るぞ」
とドアをどんがん叩く。
やっと出てきたのは、こちらもゴツさでは負けないオッサン。捜査員が突きつけた令状を見て、
「あ、隣だよ」
ボーゼンと立ちすくむ捜査員の鼻先で、ドアは閉じられた。スタジオのアナウンサーも、笑うに笑えず憮然としていた。
あるんだねー。こんな漫画みたいな事が。世の中まだまだ楽しいワイ。

外谷さんブデブデ日記(57)

スタローンの「コブラ」を見て、ふとアイデアを思い付く。権力者の支配下にある地域や都市に入り込んだヒーローが、いびりまくられると云うのは良くあるが、ヒーロー役が悪党で、権力者が外谷さんだったらどうだろう?相討ちだ、などと思ってはいけない。外谷さんは正義の味方なのだ。警察や市民は悪党を死ぬまでいびりまくる。悪党の仲間が助けに来ると、どんどん受け入れて皆殺し寸前まで追い詰め、身代金を要求し、尻の毛まで抜いてしまう。ヤバくなると、日銀総裁の叔父や総理大臣の父に頼んで、揉み消しを図る。唯一の欠点はホストクラブのナンバー1=山田君と、彼女の一代記を執筆中の作家朽木センセー、及び彼女に無償の愛を捧げる包茎ゴリラ男・ゴリイチ君・・・。面白そうでしょ。

外谷さんブデブデ日記(56)

数日前から腰痛。実は数ヵ月前からやらかしており、少し楽になったかとかがんだらグキン。イテテテテテテテテテテテテテテテテテテ・・・・・外谷さんの呪いか?

外谷さんブデブデ日記(55)

昨日BSで「ゴースト・バスターズ」の第一作を見た。ああ、マシュマロマン。あの中に外谷さんが入っているのかと思うと、感無量であった(笑)。

外谷さんブデブデ日記(54)

「M1グランプリ2022」の決勝だけ見る。ここまで質が落ちてるとはね。一組優勝した(アタリマエダガ)が、来年一杯持つかどうか。貴方たちのの漫才で子供が笑うと思うかね?

(53)の短い続き

「がーっ」とやられた後輩は、後でしみじみと
「外谷さんがやると迫力あるなあ」
と感動していた。いま考えると、外谷さんのセリフは
「電ノコ」ではなく「ノコギリ」であった。外谷さんが自力で誰かをギコギコやってるシーンを想像すると、死ぬまで寝なくて済みそうだ。

外谷さんブデブデ日記(53)

久しぶりに「悪魔のいけにえ」をみる。電ノコ殺人の記念すべき第1作である。ルポライター時代に無料チケットをもらい、それをある先輩に譲ったら、彼女と行ったらしく、後で「えらい物見せてくれたなあ」とスゴまれた。しばらくして二人は別れたらしい。
これを外谷さんが見てしまった。
確かOB会の二次会だったと思う。半世紀近く前の話である。渋谷の「ブリック」というバーであった。外谷さんは彼氏と映画を観に行って、後で合流するという話であった。
やがて来た彼女はひどくコーフンしていた。彼氏と喧嘩した風もない。これは只事ではないと思い、わたしは席を変わった。席につくや、外谷さんは真っ赤な顔で、スゴいんだぞー、ノコギリでバラバラにしちゃうんだぞーと言い出した。見たなと思った。外谷さんはさらに、前の席にいた後輩に、
「がーっ」
とさけんで電ノコを振り下ろした。
あの映画をみて喧嘩別れするのは正しい。殴り合いもいいだろう。しかし、がーは間違っている。後輩は固まってしまい、私は口を開け、部員たちは総立ちになった。そして外谷さんは他の客もいる店内で、「がーっがーっ」と電ノコを振り回し続けているのであった。何と言ったらいいのか良くわからない青春のヒトコマである。
なんと飾らない、あたしあたしの生き方をする女だろうと、私は嬉しくなった。

外谷さんブデブデ日記(52)

外谷さんと電話。
「昨日、スペツナズの工作員が襲撃してきたわよ。みんな撃退してやったけど」
と笑う。
なんか悪い予感がしたが、
「どうやった?」
「最初の奴は押し売りに化けて、昨日ケームショから出てきたばかりだで、ゴム紐買ってくんろ、ってすごむのだ。これは絞首刑を狙ってるなと思って、先に絞めてやったら、人殺しーって逃げてったわ、ムハハハハ」
「えらく訛りのある工作員だな。他にも来たのか?」
「二人めは新聞の勧誘員よ。半年取ってくれたら、これサービスしますって、液体洗剤出したから、中身は毒薬だなと、蓋開けさせて、ぶっかけてやったら、こいつも、悪魔がいるーって豚走しちゃったわ」
「豚走じゃねー。遁走だ」
「あら。でもさ、さすがオスペね、手がこんでるわ」
「スペツナズだ」
と訂正してから、
「いいか、スペツナズと云うのは、ロシアの情報局KGBの暗殺部隊ーつまり国家機関だ」
「ハイハイ」
「ハイハイじゃねえ。国立の組織が、何でお前ごときを暗殺するために、ゴム紐売りや新聞の勧誘員に化ける必要があるんだ?お前が外出した時に、そのデカいケツに放射性物質の欠片でも撃ち込めば、1時間後には肉屋に売り飛ばされてるだろうが」
この意見には無理があると思いつつ、喚き散らした。
「彼らの荷物はどうした?ゴム紐と洗剤はどうなった」
「空を見て。鳥だわ、ジェット機よ。あ!ー」
「スーパーマンだ!じゃねえ。言ってやろう。お前は、いい儲け話が飛び込んできたと舌舐めずりをした。そして、二人を追い出し、商品をコンビニか雑貨屋に売り飛ばして、懐の肥やしにしたのだ。この肥やし女」
「ほ、他の言い方無いの?」
「うるさい。押し売りも勧誘員も普通の人たちだ。恥を知れ」
「ふん」
外谷さんはそっぽを向いたと思うが、受話器のむこうだから、良くわからない。しかし、正義の糾弾は続けなければならない。
「お前は横浜の恥だ、日本の屑だ、太陽系のゴミだ。宇宙のぶうぶうクッションだ!」
「なにをーっ!ズルむけ赤ちんこ」

かくして、私は心に深い傷を負い電話を切ったのである。


外谷さんブデブデ日記(51)

外谷さんブデブデ日記(51)

劇画家の宮谷一彦氏が6月28日に亡くなった。享年76。
あの小池一夫氏はこう言った。
「あれは間違いなく劇画の頂点まで極めた男だ」と。
それを保証する傑作群の一部しか私は知らず、しかも理解不能であったが、天才であることは、予備校時代の一作で身に染みていた。
wikiの作品リストで調べてもタイトルも掲載誌も不明の、群小週刊誌に載ったスパイ・アクション物である。他の作品に比べて絵が違う。構図が違う。はっきり才能が違う。他作家の100倍の稿料を取ってもいいと思った。だが、この時から、私はある違和感を抱いていた。この人は合っていない物を書いている。それは、主人公の協力?として現れる工作員・矢萩によって明らかになる。哲学書をよみふけり、同じアパートの住人たる聾唖の少女に愛されながら、死の道を歩むこの学生(?)こそが、宮谷一彦の主人公であり、宮谷一彦自身なのだ。宮谷一彦の名を不動の物とした後年の作品は全て「矢萩」の物語なのである。こうして、本来、宮谷一彦に向いていなかったスパイ・アクションは彼の作品となった。正直、それからの名作は私の理解の範疇を越えている。それが彼の本質だとわかってはいても、勿体ないなあとの思いは変わらなかった。しかし、救いはあった。作家になって数年後、引っ越した近くの中華料理店で、何気なくコミック誌をめくっていた私に、宮谷一彦は挫折したトランペット吹きとして現れたのである。才能はありながら名声とは無縁の彼は、最後の演奏を行う。そこへ名声に包まれたかつてのライバルが現れる。そちらに気を取られる観客に、何をしてるんだ、おれとシャウトしようぜと無言で話しかけながら、彼は演奏をやり遂げる。そして、恋人とともに、凍えながらでも朝を待とうと、冬の夜に消えていく。宮谷一彦は自作を、全て僕の真実ですと断言しているが、それは魂と言い換えてもよかろう。暇潰しに読んだ小さな物語に私はそれを感じた。そしてひっそりと私の宮谷一彦に礼を言って、店を出たのだった。

外谷さんブデブデ日記(50)

プーチンの暗殺部隊に狙われて急遽帰国した外谷さんの家で「ゴーストバスターズ」シリーズの最新作「アフターライフ」を見る。ご存知マシュマロマンが大挙して現れるシーンで、
「あら、昔この役やったわよ」
と言い出して、私は
「えーっ!?」
と驚く前に
「やっぱり」
しみじみとうなずいてしまった。
話を聞くと、
「昔ハリウッドの観光をしてたとき、近くの食堂で三段重ねのハンバーガーを食べてたら、変なオヤジがやって来て、自分はハリウッドの映画プロデューサーだが、製作中の映画のキャラクターに合う役者がいなくて困っていた。しかし、やっと見つけた。神の助けだ。君しかいない。是非とも出演して欲しいと、言われてさ、その場でスタジオへ拉致され、身体中真っ白に塗られてから、水兵さんの服と帽子被らされて、でっかいセットの中で暴れまわったわよ。終わると、いやあ、世界映画史の中でこれほどの適役はなかった、とか誉められて、10000ドル貰ったわ」
外谷さんとあれか。プロデューサーは正しい( ̄0 ̄)/。


訂正しまーす。

前回、ニック・アダムス氏の出演作を「サンダ対ガイラ」と書いたのは、大間違い。正しくは「フランケンシュタイン対地底怪獣」でありました。彼にはもう1本東宝怪獣映画があり、タイトルもずばり「怪獣大戦争」。ラストの?まだ見ぬ未来に向かってな?でお馴染みのあれである。
最後の東宝出演作「国際秘密警察 絶対絶命」の翌68年に、薬の過剰摂取により死亡。36歳。若いなあ。アメリカでの出演作に恵まれず、悩んでいたとも言われ、自殺説もあるという。主演をしてもどこか虚弱な翳のつきまとう俳優であったが、日本での撮影に際しては、極めて明るくざっくばらん。スタッフ、キャストとも打ち解けて、人気者であったという。いちばん仲の良かった土屋嘉夫から、女性への挨拶だと教えられ、スタッフ、キャストと会うたびに「儲かりまっか?」と繰り返していたらしい。来日時は妻と離婚話で揉めており、共演の水野久美を「妻と別れるから結婚してくれ」と口説いていたという。反動か。
一方、「サンダ対ガイラ」の出演俳優ラス・タンブリンは、ニック・アダムスとはは正反対。日本人スタッフ、キャストとは一切付き合わず、評判は良くなかったそうな。演技を会わせようとしない彼に、水野久美はヒステリーを起こしたとも伝えられる。二線級に留まったニック・アダムスに対し、「ウェストサイド物語」「西部開拓史」などの大作の常連であり、「青春物語」ではアカデミー助演賞にノミネートされているプライドのせいかもしれない。
しかし、後年低迷期を迎え、出演作の数も質も低下、アルコールに溺れていた彼を救ったのは、正にその日本怪獣映画であった。
アメリカ及びその他の国でSF ホラー モンスター・イベントが開かれるたびに、彼のもとへ招待状がとどけられたのである。最初は無視していたものの、あまりの熱心さに、
「僕を呼ぶのは?親指トム?に出ていたからか?」
と尋ねたところ、主催者はこう答えた。
「いいえ、?The War Of The Gargantus?(?サンダ対ガイラ?のアメリカ版タイトル)のせいです」
タンブリンにしてみれば、所詮東洋の島国で撮った、たかが怪獣映画。だが、世界中のSFモンスター・ファンがこれゆえに自分の名を忘れず、邂逅を望んでいると知ったとき、彼はきっぱりと酒を断ち、出来る限りのイベントに顔を出した。そして、72年から絶えていた映画出演を87年に再開し、2022年現在、87歳でなお活躍を続けているという。2014年にロスで再会した佐原健二は、昔とまるで違う和やかな雰囲気で語り合えたと語っている。やるねえ、東宝怪獣映画。

外谷さんブデブデ日記番外編 私のあるBEST3

ある、などと思わせ振りな書き方をしたが、単にTV放映された未公開映画のお気に入り3本のことである。
しかし、最初の1本を観てから60年、最後の1本から50年ー半世紀を経てなお、このベスト3には揺るぎがない。全てビデオとDVD化されているから、しつこく見直しているが、何度観ても面白い。胸が踊る。
第三位は「要塞警察」
ご存じジョン・カーペンターの傑作で、学生時代に観て、度肝を抜かれた。どんなに抜かれたかというと、この出不精の私が、既に二番館三番館に落ちていたカーペンターの出世作「ハロウィン」を求めて、京成の青砥まで押し掛けたほどである。正直に言うと、私はカーペンターも「ハロウィン」も大して評価していないが、「要塞警察」だけは
頭抜けてスゴいと思う。ただし、これにはある意味情けない事情が絡んでいる。
ご存じの通り、これはロスにある警察の分署に、罪もない娘をストリート・ギャングに無意味に射殺された父親が、その犯人を殺して逃げ込んでくる。彼を追ってきたギャングたちによる包囲戦が開始されるが、この分署はなんと引っ越し当日。武器は箱詰め、電話線も切られた上、周囲には建物もなく、完全な孤立無援での戦いを強いられる。警官たちは次々に倒され、残ったのは、男女三人と半ば失神状態の父親のみ。幸い男女の警官以外の一人ー護送の途中に立ち寄った凶悪犯罪者が獅子奮迅の活躍を見せる。
鍵のかかった銃器箱の中から、間一髪取り出したショットガンで、ギャングたちを薙ぎ倒すシーンの迫力はいつか小説にしようと思いながら、まだ果たしていない。
何より私を驚かせたのは、カーペンターが、このどこから観てもアクション映画をホラー映画として撮っていることだった。地下から侵入してくる無言のギャングたちは、衣装も顔も黒く塗りつぶされたエイリアンそのものであり、サイレンサー付きライフルで打ち砕かれるガラス窓は囁くような音しかたてない。正しく得体の知れぬ怪物なのである。なんてスゴい監督が出てきたんだ、さすがハリウッドと感動していたら、ハロウィン」以下の諸作を見るたびに私の感動は冷めて行くばかりであった。
「要塞警察」自体もDVDで見直してみると、あらららら。ギャングたちの顔ははっきりみえるし、ガラスの破壊音も普通であった。ようするに、受信状態の悪いアパートでみていた白黒TVを、隣室の迷惑にならぬよう音量を下げていたために、意外な効果が生じてしまったのである。
この他にも問題はいくつもあるが、初回のイメージは今も私の記憶に残り、ひょっとしたらこの監督はいつか何かをやらかすかも知れないと、希望の焔を灯し続けているのである。

第二位は「恐怖の火星探検

高校時代に実家で観た。「土曜映画劇場」(だったかな)の1本で、AIPのとんちきフランケンシュタインや狼男ものも一緒だったから、これもAIPかと思っていたら、ヴォーグ・ピクチャーなるプロダクションの製作であった。監督はやはりAIPで低予算SFやホラーを作っていたエドワード・L・カーン。主演はマーシャル・トンプソン。面白いのは脚本で、あららジェローム・ビクスビイ。「ミステリー・ゾーン」で映像化された短編「今日も上天気」一作で名高い作家だが、この映画では、ホントにSF作家かよと目を剥きたくなるムチャクチャぶり。侵入していた火星人めがけて、宇宙船内で拳銃は撃つ、手榴弾はドカン、最後などバズーカ砲まで撃ちまくる。ま、スペオペでは船内で熱線銃など平気で撃ちまくっていたから、たかがバズーカと思ったのかも知れないが、いい度胸ではある。確かにこれがなければ、この映画ちっとも面白くなかったであろう。火炎放射器とゆー手もあるが、予算が追い付かなかったとみる。しかし、一応、高圧電流も放射線も試してはいるのが、嬉しいなあ。まてよ、原子炉とバズーカ砲か。やっぱりスゲーや。乗組員たちは次々に死んで行き、いよいよラスト。空気の減り具合から怪物が人間同様酸素を吸って生きていると知った人々は、船内の空気を抜き、さいごのハッチを破って襲いかかってきた怪物をようやく仕留めるのであった。
「エイリアン」の元ネタとも言われる作品だが、そんなことは知らないで観た私には、スリル満点サスペンスばっちりの大傑作であった。設定はSFだが、正しくはモンスター・ムービーであろう。しかも迫る怪物、逃げる人々に絞った脚本には余計な挾雑物がいっさいなし。乗組員の殺され方もスピーディーで、追い詰められる恐怖も良く出ていたし、いやあ、面白かったよ、ビクスビイ。低予算SFにも例外的に傑作があると知った記念すべき1本。宇宙船を舞台にした傑作にはもう1本、かのマリオ・バーバの「バンバイアの惑星」があるし、映画的な出来はこちらの方がいいのだが、後味が少しねえ。我が国のTV映画ももサスペンス劇場でいいから、こういうのをたまにこしらえてくれると見直すんだけどな。

さて第一位は、ジャーン「悪霊の棲む館」。
といっても、分かる人は少ないだろう。DVDタイトルは「襲い狂う呪い」。ホラー・ファンならご存じ、H・Pラヴクラフト「異次元の色彩」の映画化である。監督は長年ロジャー・コーマン率いるAIPで腕を奮っていた名カメラマン=ダニエル・
ハラー。またAIPかよと、全然期待しないでみたら、タイトルでドキリとした。ラヴクラフトも「Color From Space」も知っていたし、何より脚本がジェリー・ソール。「アウターリミッツ」第一作「火星、その恐るべき敵」を担当したご仁である。ひょっとしたらと、期待した気分、わかって頂けるかどうか。しかもしかもしかも、出演がTV「西部の反逆児」や東宝の「サンダ対ガイラ」でお馴染みニック・アダムスと、ホラーキング・オブ・キングス=ミスター・ボリス・カーロフ。 
期待は裏切られなかった。作り方が古典的なせいで、まず当たらないと判断された(これは同感)故の未公開だろうが、いやあ、面白いの何の。正直言って昨今の原作に忠実な力作より遥かに興奮しましたね。あの原作を製作当時のホラー・テイストに合わせた典型的な怪奇映画タッチで押しきったのが成功の原因である。
変身した人間はやはり暴れまわらなくてはならないのだ。しかも、製作陣は原作がSFだと言う事実を忘れてはいない。変身したカーロフの出てくるシーンに流れる効果音は明らかに機械音なのである。
恋人に会うべくアーカム(!)にやって来た若者が体験する怪異という基本設定は、怪奇映画の普遍だし、変身した人間の扱いも、下手に凝らずに典型的なのがよろしい。隕石の放射線で狂った下女の味付けも、幽霊屋敷ものの雰囲気を壊していない。
私がイカれたのは、何よりも、主人公の訪れるウェイトリー家までの道筋の描写であった。荒野の真ん中に口を開けた隕石孔、枯れ果てた樹木、揉まれただけで崩れるその枝。単純なグラスペイントだが、いやあ、この先に待つ出来事を連想させるに十分な効果を挙げていた。
カーロフの演技は普通の出来栄えだが、この人くらいになると、出てくるだけで画面が盛り上がる。大したものである。ニック・アダムスも好演。今でこそ、DVDでいくらでも見返せるが、あの時代は、明らかに大作のおまけに付いてきたB級C級映画など一回こっきりの放映が命。いいものを見たなあと感激しながらも、ああこれっきりかと、しみじみしたものだ。
他にも西部劇やらギャング物やらのベスト3もあるのだが、それは別の機会に。
ハワイでも横浜でも大惨事が起こらないので、外谷さんの体調悪化がしんぱいである。一説によると、ウクライナの土地分配でプーチンと揉め、暗殺部隊に追いかけ回されているらしい。早く返り討ちにしてしまえ。











































 .

とてもGooな内容ですよー第二弾!

でんぐり返った外谷さんの背後にご亭主が寝ていたため、故意か偶然かで揉めに揉め、横浜全土に緊急警備態勢が敷かれた模様。付近を航行中の船舶はご用心とのこと。ゴジラか?

とてもGooなお知らせですよー

絵本「城の少年」が動画になりました。YouTubeで「城の少年と書き込んで、ご覧下さい。全編ではありませんが、いい動画です。泣けますよ。外谷さんはカンドーの余り、でんぐり返りました。

外谷さんブデブデ日記(49)

まだ中学生だった頃、「高校三年生」なる歌が大ヒットした。歌手は舟木一夫である。多分映画になるだろうと思っていたら、案の定大映で映画化された。1963年のことである。当時から田舎町のインテリぼーやを気取っていた私は、「ケッ、日本映画。ケッ歌謡曲の映画化」と見向きもしなかったが、これと続篇が昨日CSで放映され、ひっくり返りそうになった。ななんだこれは? 
問題は初作ではなく、続篇の「続高校三年生」の方であった。キャストの一人、突っ張りの女子高生を優しく諭す人格者のオッサンが、成田三樹夫ではないかヽ( `皿´ )ノ。気が狂いそう。
私と同世代とは言わず、映画ファンなら、「仁義なき闘い」のインテリやくざ松永某を忘れてはいまい。権力志向丸出しの癖に、何処か憎めない刑事を演じたのは、松田優作主演の「探偵物語」であった。
彼の本領は「仁義なき〜」のインテリやくざにあり、そのどハマりぶりに、他人など誉めたことの無い松田優作が「インテリやくざならこの人」とため息混じりに断言したという。東大に入りながら1年で中退。その理由が「緊張感がない」だったそうで、やはり「仁義なき〜」の人だったのだろう。今回の舟木一夫や大映青春スターたちに囲まれた良いオッサンを見て、のけぞるだけでは済まず、ヤケ酒を飲んで交番に放火する奴が出てくるのではないかと、夜も眠れないのであった。下着姿で誘惑する女子高生に指一本触れぬ成田三樹夫ねえ。世界は半世紀以上前から狂いっぱなしなのだ。
ハワイからの連絡によると、米軍基地を頻繁にうろつく外谷さんがしょっちゅう目撃され、核ミサイル搭載の原子力潜水艦の周囲を、ブクブクと泳いだり潜ったりする怪生物に警備兵が一発撃ち込んだら、翌日、外谷さんはお尻にでっかい絆創膏を貼って買い物に出掛けたという。これは極秘情報だが、あるホームレスがここ数日、動物園内をうろついており、象や河馬の他に外谷さんとも会話しているのだが、誰の目にもプーチン大統領としか映らず、外谷さんが第三次世界大戦の起爆剤になるのではないかと、バイデン大統領以下の政府関係者は、連日、ホワイトハウスと自宅の中をうろうろしているそうな。
ま、皆さんお元気そうで何よりです。

外谷さんブデブデ日記(48)

ハワイの友人から極秘情報。大金持ちの娘5才が誘拐されたが、なんと犯人グループは、身代金を要求する前に子供を解放し、自首してきたという。詳しい事情は明らかにされていないが、子供は日ごろ動物園によく通っており、外谷さんの檻の前で、1日中話し合っている姿を何度も目撃されている。
一方、犯人グループは全員震え上がっており、あいつと知り合いとは思わなかったと口を揃えているらしい。子供の方は、「あたしを苛めたら、外谷さんが来るわよ」と繰り返し、外谷さんの体つきや吠え声を真似したら、みんな、「本物だあ」と腰を抜かしてしまったとのことで、警察の上層部では、観光客が減ることをおそれる観光局の意見をいれ、犯人グループと司法取引を行い、全てなかったことにする方針。マスコミからも反対意見は一切ないという。
外谷さんの元には感謝状と金一封が届けられ、当人は
「何だか知らないけど貰っとくわ」
といつもの態度であったという。

外谷さんブデブデ日記(46)

諸君!「ボデロ展」を見よ!!渋谷Bunkamuraへ急げ!!君たちのふるさとはそこにある!!ルンルン(⌒0⌒)/~~

外谷さんブデブデ日記(45)

やっと高畑充希の「ムチャブリ」を見る。「オタクに恋は似合わない」で注目して以来だが、やはり天性のコメディエンヌぶりでみせる。惜しむらくは絡む男二人がペケである。志尊諄は気弱なキムタクで、全く個性が感じられないマネキン。松田翔太ときたらどこに松田優作の血が流れているのか?こちらも大根丸出しではないか。
結局、画面をもたせているのは、高畑充希のみ。両大根が却って彼女の上手さを引き立てているという、ひにくな結果になっている。喜劇がこなせる役者にヘボはいない。高畑充希という恐らく日本一のコメディエンヌは、妙な芸術志向に陥らぬかぎり、大いなる女優の道を進んでいくだろう。
昨夜、100年前のヒグマの大暴れドキュメントを見ていたら、ハッとした。外谷さんこんなところでバイトしていたのか。もちろん食われる方じゃないよ。  

外谷さんブデブデ日記(44)

CSでやってた「ミステリー・ゾーン」第3シーズンが無事終わり、続く第4シーズンは1時間ものである。もともと、アメリカで中途で打ち切られた番組の穴埋めだったので、それまでの30分シリーズを無理矢理引き伸ばした印象が強く、チグハグだ、切れ味が鈍い等の否定的な評価が多いが、実は駄作もかなりある30分シリーズより、遥かに見ごたえのある作品が揃っている。「幻の谷間」なんて、プリントされた物体が実体化するシーンのワクワク感は今でも忘れていないし、SF的ラストの情感も見るたびに胸に迫る。戦後何十年もたってから死者が呼びに来る「海底の墳墓」と、SFのはずが実は、となる「幻の宇宙船」の怖さや、見当はついても、やはりガーンとくる「暗闇の男」の現代性などは、もっと言及されてもいい。
早逝したチャールズ・ボーモントの「淑女のための歌」は、私のもっとも好きな短編のひとつだが、「霧に消えた船」としてラインナップされている。原作には及ばなかったが、なかなか感動的な出来栄えであった。
ちなみに「ミステリー・ゾーン」は「幻」と付く作品に傑作が多く、前記「幻の谷間」「幻の宇宙船」の他にも、しみじみとするラストがいいタイム・コンデンストもの「幻の砂丘」と、どいつもこいつめSFだとぬかすが、実はホラー手法のファンタジー「幻の騎兵隊」等、ベスト級が勢揃いしている。
私は人間が小さいせいか限定空間を舞台にした話が隙で、バスの待合室を舞台にした解決なしのファンタジー「めぐりあい」や「人造人間の家」、乗り合いバスの乗客の一人がエイリアンらしい「火星人は誰だ」、軍人、踊り子、道化師ら五人が、ある部屋から脱出しようとあがく「奇妙な奈落」などが印象的である。
しかし、明らかに「ミステリー・ゾーン」から生まれた「世にも奇妙な物語」が、どれをとっても地獄のようにつまらないのはどういう訳だ?あ
ところで「ミステリー・ゾーン」の小説版「異形コレクション」の名前をこの頃聞かないが、どうなっておるのかな、井上雅彦大明神?

外谷さんブデブデ日記(43)

いま、八ヶ岳にいるのだが、友人知人が次々にコロナ感染中。こちらは雪で除雪車が来ないと車が動かない。おお、「復活の日」ではないか。
外谷さん助けに来てくんないかなあ( >Д<;)。

(42)の続き

横山光輝氏の短編について一言。この傑作選にも一編入っているが、氏の短編の最高傑作は、私の高校時代「別冊少年サンデー」に掲載された?影の国?である。正直、横山光輝がこんなイマジネーション豊かな作品を描くとは想像もしなかった。
少年探偵が車で銀行強盗を追いかけて行くという当時の少年物らしい出だしが、不意に湧き出てきた霧に包まれて一変する。彼らがたどり着いたのは、分厚い雲の間からわずかに日が差し込む荒野だった。夜になり、探偵が探しだしたギャングたちは、奇怪な森の中で殺人植物に絞め殺され、車で逃げ出した探偵は振り返ってこう悲鳴を上げる。
「わあ、森全体が追いかけて来るぞ!」
そして車は、今の今までそこになかった地割れに飛び込んでしまい、気がつくと彼はアフリカの砂漠にいたのである。かたわらには地面から飛び出した車があった。
帰国した探偵は、空港の記者会見で
「とても信じられないでしょうが、あのギャングたちが帰って来なかったら、僕の話を信じて下さい」
と去っていく。あとには、茫然自失の記者たちが残るのみ。
これが私の横山光輝短編最高傑作。
同時期に「サブマリン707」という潜水艦もの最高傑作を描いた小沢さとるがいて、この人は決してSF専門ではないのだが、手塚、横山両氏とは別の方向でSFの可能性を探ろうと努めていた。もう人々の記憶にもないだろうが、こうした非SF漫画家には手塚、横山ラインとは大いに異なる、しかし見事な作品が揃っており、近々紹介してみたいと思っている。
君は「13号発進せよ!」と「エンゼルZ」を知っているか?

外谷さんブデブデ日記(42)

「SFマンガ傑作選」を読む。70年代を代表する傑作14編を収録とのことだが、何だか疲れるわ。
一編一編は確かに傑作なのだ。メンバーも二大巨頭/手塚治虫、横山光輝を初めとしてそうそうたる面々が並んでいる。だが、纏まるといかん。ここに選ばれた名作とは、非難を承知で言うと、気取った文学趣味に侵された作品が多すぎる。これもお怒りを覚悟で言って仕舞うが、女性陣がやばい。既成の小説にはない可能性がSFにはあった。ラブストーリーにしても、SFの視点から見れば、幾らでも斬新なものが描ける筈である。確かにみな努力をしている。なのに何故疲れるのか?絵柄が似ているのは仕方がない。しかし、SF的メカを入れて、文学的なセリフを吐くコマを描いても、それではSF漫画にならんのじゃ。男性陣も含めて、ここには既成の表現を吹き飛ばすダイナミズムがない。もっと言うと、吹き飛ばそうとする意思がない。センチメンタリズムにも、叙情にもダイナミズムは必要なのですよ。SFに「安住」してはいけませんぞ、クリエイターの皆さん。と書いたが、これは50年前の作品へのいちゃもんである。現在のSF漫画はどうなのか?

外谷さんブデブデ日記(41)

外谷さんブデブデ日記(41)


又聞きだが、ハワイのコロナ感染者数はアメリカ本土に比べて、極端に少ないという。こら何かあると思ったら、本土の友人から連絡があって、コロナ撲滅の新興宗教がのして来て、実際に効果があるそうな。あわててハワイのニュースを送って貰ったら、非常に太った女教祖が、仰向けになった感染者の顔の上に、デカい尻を押しつけて3秒。PCR検査が見事陰性になっていた。人気は高まるばかりで、本土と日本にも上陸の予定だという。カソリックその他の宗教団体からは、インチキだ、でぶ魔術だと抗議の声が上がっているが、教祖は意に介さず、余勢を駆って日米でレコード・デビューも決まっているらしい。日本では、誰も知らないうちに「徹子の部屋」と「さんまのまんま」に出演予定であり、徹子とさんまは発狂寸前であるという。米本土の科学者と獣医たちは、女教祖の尻の調査を要求しているが、教祖は断固拒否しており、バイデン大統領が調停に乗り出す予定。この団体を応援しているのは、なんとトランプ元大統領であり、大統領再選に利用する魂胆とマスコミは非難しているが、獣医たちによれば、それ以前の良く似た性格、というか同族意識がもたらした結果であると意見の一致をみた。ちなみにデビュー曲のタイトルは、教祖自身がつけた

「外谷さんは白い薔薇」

であり、わかるような気もするがと、専門家は口を濁している。ちなみに一般公募では「デブ」が圧倒的であった。
今年も外谷さんは元気そうである。拍手。  

no title

明けましておめでとうございます。
新年初のブデブデ日記です。
ハワイの外谷さんからメールあり、
「今年は鳥のように空を飛んでやるわ」
意味不明とゆーか理解不能の数秒が過ぎてから、でんぐり返った。河〇がソラヲトブ。あそれブーブーブー。踊ってしまったではないか。早速、
「コロッケ五円の助みたいに尻からジェット噴射するのか?」
ときいたら、
「違うわよ。翼を移植して貰うの」
嫌な予感がしたので、
「白鳥か?」
「白鳥よ」
「むむむむむ」
「何か?」
つい想像してしまい、話はそこで終わった。皆さんはよしなさい。少しでも気が狂いたくないでしょう。なかったこと、なかったこと。そのうち、
「米空軍がハワイ上空で太ったUFOを探知。戦闘機100機が捜索に向かうが、名を名乗れという問いに、うるさい、ブウ。と返され、戦闘状態に突入。全機未帰還」
とのニュースが世界を駆け巡るかも知れない。今年も外谷さんは元気であった。なかったこと、なかったこと。
執筆中、BGM代わりにかけっぱなしにしておく番組というのがあって、バラエティーでは「他人のSEXで生きてる人々 」映画では「おとうと」と「劇場霊」である。
前者は吉永小百合、鶴瓶、加瀬亮、蒼井優、我がヒロイン石田ゆり子様と匆々たる布陣。演技だの何だの言っても仕方がないし、感動的なのは確かだが、鶴瓶が病に倒れてからのホスピスの描写が、何とも奇妙奇天烈で面白い。死にかけた鶴瓶。皆で抱え起こし、
「もう少しの辛抱よ」
辛抱して治るならいいけど、死ぬんでっせ。台詞の使い所おかしくないですか?相手は呼吸器つけてる瀕死の病人である。横にしといた方が本人楽なのと違いまっか?更に小日向文世の所長が
「最後に写真撮ろうな」
とにこやかにスマホを向ける。鶴瓶は秒読み段階である。なんか怖くなってきた。
後者は「犬鳴村」「樹海村」共々糞味噌にけなした作品だが、BGM代わりには実に安定しており、何度見ても飽きない。中田秀夫監督としては、極めてオーソドックスな展開なのが良い方に働いたのか。怖がらせも奇をてらわず、テレビの二時間サスペンス・タッチにしたのが気楽に楽しめる理由だろう。何度見ても楽しめる。幕の内弁当みたいなホラーである。イカれた舞台監督と人形製作者のおっさん、役立たずの刑事たちも、定番ながら良い味をだしている。また見るぞー( ̄0 ̄)/。

という次第で今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m。

菊地秀行( ̄0 ̄)/
























外谷さんブデブデ日記(40)

ハワイでM9クラスの地震があり、多数の負傷者が
出た模様。ただしあまりに地域が限定的なため、その震源地ー動物園に捜査の手が入った。捜査地点はひとつ。檻の中から縄跳びの縄が見つかったため、真相は明らかになったが、結局揉み消された。余りにもアホらしいと、警察も市当局もやる気を失ってしまったのである。檻の主は、あたしの何が悪いのさと鼻歌混じりであり、負傷者は負傷し損という、灰色の結末を迎えた。いつもなら、告訴だ賠償金だと息巻く家族も、あの女ならしょうがないと、矛を納めてしまい、外谷さんは当然よ( ̄^ ̄)と胸を張って、ここ数日、食欲旺盛だという。ま、お元気で何よりです。
最近Amazonの「SFホラーファンタジー売れ行きランキング」を見ていて呆れ果てた。ベスト100位に日本SFの新作殆ど入ってないではないか。大多数は異次元転生ファンタジー、次いで口当たりの良さそうな癒し系ファンタジーとホラー。SFの新作は数えるばかり。異星の客や華氏451度がランクインっておかしくないかね?残像に口紅を、日本沈没、復活の日っていつの作品だよ?新人さんよ、頑張ってくれ。頼むから。

no title

ポルトガルのファンタスティック映画祭で「樹海村」が最優秀作品賞を受けたとやら。ここは素直におめでとうと言っておこう。
しかし、正直な一言は、
「審査員出て来い??」
大分前から、ホラー、ファンタジーの分野では困った現象が起きていた。
「訳が分からなくてもいいや」
「ファンタジーなんだから、分からなくても当然」
という暗黙の了解である。
脚本家か監督が気取りだした結果だ。
「納得いかない部分は想像してくれよ。これは君の創造力への挑戦なんだぜ」
そして、映画の道理を片っ端から欠いた奇形映画が、ホラーだからいいんだ、ファンタジーだから許されるんだと量産され始めた。その代表が、「樹海村」と「犬鳴村」である。シナリオがいい加減で、それを監督が無批判にそのまま撮るから、まともな観客には訳のわからない場面が続出するようになった。いちいち検証すると頭の血管が切れそうになるから止めとくが、もう勘弁してくれ。清水監督、あれが最優秀作品賞を取って、納得しましたか?世界がわかってくれたと感激しましたか?バカな審査員がバカな結果を出して、あなたは多分、ますますおかしくなっていく。そして、日本のホラーは・・・ま、いいです。受賞おめでとうございます。

外谷さんブデブデ日記(39)の続き①

「ラヴクラフト・カントリー」を観る。二話観てやめる。自分に社会性があると思いこんでる改悪専門のイメージからっきし野郎が、ホラーなめんじゃねえぞ。

外谷さんブデブデ日記(39)

「樹海村」を観る。前作「犬鳴村」が14億円も稼いだというのも天を仰いだが、こっちも負けず劣らず酷い。「呪怨」でやり尽くした手法のオンパレード。結局は「ぼっけえきょうてえ」の衣装で「マタンゴ」がやりたかっただけか。何処かの前衛舞踏に影響されるのはいいが、幽霊や幻覚出せば出鱈目やってもいいと思ってるなら、大間違いですぜ、清水監督。前作よりは見せ場もあるし、面白いから、また大当りするかも知れないが、このまま行くと、普通の映画が撮れなくなりまっせ。ま、撮る気もないかも知れないけれど。

外谷さんブデブデ日記(38)

久しぶりにテレビの「日本怪談名作劇場」を見る。昔は他にも「怪奇十三夜」や、「怪奇ロマン劇場」等、時代劇の怪談シリーズが夏ごとに作られ、傑作も多く、私の目を楽しませてくれていたものだが、時代劇という金のかかる製作条件の厳しさや、視聴者の嗜好の変化によって、近頃はさっぱり。お蔭で番組紹介のアナウンスが「カイネコからくり天井」「怪談ルイケ淵」と自信満々でやらかす時代になってしまった。もちろん「怪猫(かいびょう)からくり天井」 「怪談累(かさね)ケ淵」のことである。読み間違いではない。単純にしらないのである。それほど怪談ものは作られていないのだ。
代わりに出てきたのが、稲川淳二以降ショウケツを極める実話怪談と怪談師なる輩だ。そもそも怪談というのは、落語、講談の修行に修行を重ねたプロたちでも、かけるのを躊躇するほどの難物なのである。単なる上手い下手は一度聴いてみればわかるが、本物か偽物かは「怖い」だけではなく、「怖くて興奮するか」で決まる。名人上手の怪談は優れた映画や小説同様、次が聴きたくて堪らなくなるものなのだ。私は小学生の時、「牡丹灯籠」の講談をきき、そのあまりの怖さ面白さに、「御札剥がし」の前で終わってしまったのが惜しくて口惜しくて、次週を待ちかねたが、次はもうかからなかった。芸とはこういうものだろう。それが今の実話怪談とやらはどうだ。怪談師といっぱしのプロ並みの肩書を付けた素人どもが、それらしい話を合宿の怪談会のレベルでおしゃべりしているだけ。ご本尊の稲川某も、私は怖い上手いと思ったことは一度もない。ま、命懸けで芸を学んだこともない素人どもに、文句言っても仕方ないけどね。
今回初めて見てビックリしたのが「怪談夜泣き沼」。歌舞伎や講談で名高い?小平次もの?の1話。河竹黙阿弥の原作である。主演は小平次に、なんと川地民夫。日活の中堅スターで、あの「仁義なき戦い」第1話で、梅宮辰夫に射殺された兄さんである。まさか怪談に出て、しかもゾンビみたいに、殺されても殺されても甦る(亡霊だからね)小平次をやるとは思わなかった。あのソフトな風貌が、幽霊かと思うと大いに効果をあげている。しかし、特筆すべきは淫乱な女房おかつを演じる新藤恵美。何を見ても、合ってねえなあとしか思えなかった大根が実に素晴らしい(^◇^)。役にはまった女優とはこれ程魅力的なものなのか。演出もなかなか凝っていて、新藤恵美を殺した綿引勝彦の乗る小舟が、サイノカワラを思わせる岸辺に着く場面など感心させられた。
ところで外谷さんは今日も元気だろうか?

no title

外谷さんブデブデ日記(37)

ハワイの動物園から緊急電話あり。
巨大ワニが逃げ出し園内をうろうろし始めたため、園長が保安課に外谷さんの出動を要請。ところがお昼寝中だったため、ご機嫌斜めのまま素手でワニさんと対決。尻尾まで入れると五メートルに及ぶ相手に、パンチとキックで戦いを挑んだ。
キックでのけ反らせたところへパンチをぶちこみ、ぶんと飛んできた尻尾も鷲掴みにして振り回し、地べたへ叩きつけてWINだったという。何か平凡だなあと思ったら、そのあと、ワニさんはなんと二本足で立ち上がり、ボクシングのクラウチング・スタイルを取って、カモンと挑発。応じた外谷さんと互角に渡り合ったものの、パンチの多くはでか尻で防がれ、ついに敗北したという。最後は互いの健闘を外谷さんが讃え合
うはずもなく、グロッキー状態のワニさんを「この野郎」と10回ほど踏んづけて止めを差したらしい。五メートルのワニとボクシングをして勝つ女か。あなたの知らない世界だ。
とにかく今日も外谷さんは元気であった。パチパチ。

no title

外谷さんブデブデ日記(36)

2021 8/7(土) 17:20

アメリカの友人から、緊急連絡あり。
「オマエ、外谷サン知テルアルカ?」
「あー。世界の誰よりもな。また何かやらかしたか?」
「ドーユー生物ダ?」
「一応ニンゲンだよ」
「嘘ヲツケ。外谷サンガモトデ、生物学ニ新タナ1頁ガ開カレヨウトシテイルノダ。人間ノワケガナイ。おーまいがー」
友人によると、ハワイの動物園にケッタイな生き物がいるという噂を聞いたアリゾナの生物学者が、わざわざハワイを訪問。サングラスにアロハシャツでバナナジュースを飲みながら、アロハオエ〜とやらかしていた外谷さんを見て仰天。友人の考古学者に連絡。二人して半年動物園に通いつめて観察した挙げ句、あの恐るべき恐竜3紀ーー三畳紀、ジュラ紀、白亜紀の後に「外谷紀」を設けるべきだと学会に提言。驚くべきどころか、恐るべきことに、外谷さんの生活を検討した学会は、これを受け入れることになりそうだという。
恐竜絶滅の寸前、ティラノサウルスもブロントサウルスもぶちのめした生き物が、地上を闊歩していたわけで、しかも、俺は学生時代からその生き残りと交友関係があって、奴の好きなミステリまで知っている。もう訳が分からん。