外谷さんブデブデ日記(38)

久しぶりにテレビの「日本怪談名作劇場」を見る。昔は他にも「怪奇十三夜」や、「怪奇ロマン劇場」等、時代劇の怪談シリーズが夏ごとに作られ、傑作も多く、私の目を楽しませてくれていたものだが、時代劇という金のかかる製作条件の厳しさや、視聴者の嗜好の変化によって、近頃はさっぱり。お蔭で番組紹介のアナウンスが「カイネコからくり天井」「怪談ルイケ淵」と自信満々でやらかす時代になってしまった。もちろん「怪猫(かいびょう)からくり天井」 「怪談累(かさね)ケ淵」のことである。読み間違いではない。単純にしらないのである。それほど怪談ものは作られていないのだ。
代わりに出てきたのが、稲川淳二以降ショウケツを極める実話怪談と怪談師なる輩だ。そもそも怪談というのは、落語、講談の修行に修行を重ねたプロたちでも、かけるのを躊躇するほどの難物なのである。単なる上手い下手は一度聴いてみればわかるが、本物か偽物かは「怖い」だけではなく、「怖くて興奮するか」で決まる。名人上手の怪談は優れた映画や小説同様、次が聴きたくて堪らなくなるものなのだ。私は小学生の時、「牡丹灯籠」の講談をきき、そのあまりの怖さ面白さに、「御札剥がし」の前で終わってしまったのが惜しくて口惜しくて、次週を待ちかねたが、次はもうかからなかった。芸とはこういうものだろう。それが今の実話怪談とやらはどうだ。怪談師といっぱしのプロ並みの肩書を付けた素人どもが、それらしい話を合宿の怪談会のレベルでおしゃべりしているだけ。ご本尊の稲川某も、私は怖い上手いと思ったことは一度もない。ま、命懸けで芸を学んだこともない素人どもに、文句言っても仕方ないけどね。
今回初めて見てビックリしたのが「怪談夜泣き沼」。歌舞伎や講談で名高い?小平次もの?の1話。河竹黙阿弥の原作である。主演は小平次に、なんと川地民夫。日活の中堅スターで、あの「仁義なき戦い」第1話で、梅宮辰夫に射殺された兄さんである。まさか怪談に出て、しかもゾンビみたいに、殺されても殺されても甦る(亡霊だからね)小平次をやるとは思わなかった。あのソフトな風貌が、幽霊かと思うと大いに効果をあげている。しかし、特筆すべきは淫乱な女房おかつを演じる新藤恵美。何を見ても、合ってねえなあとしか思えなかった大根が実に素晴らしい(^◇^)。役にはまった女優とはこれ程魅力的なものなのか。演出もなかなか凝っていて、新藤恵美を殺した綿引勝彦の乗る小舟が、サイノカワラを思わせる岸辺に着く場面など感心させられた。
ところで外谷さんは今日も元気だろうか?

コメント

非公開コメント