2022/01/27
(42)の続き
横山光輝氏の短編について一言。この傑作選にも一編入っているが、氏の短編の最高傑作は、私の高校時代「別冊少年サンデー」に掲載された?影の国?である。正直、横山光輝がこんなイマジネーション豊かな作品を描くとは想像もしなかった。少年探偵が車で銀行強盗を追いかけて行くという当時の少年物らしい出だしが、不意に湧き出てきた霧に包まれて一変する。彼らがたどり着いたのは、分厚い雲の間からわずかに日が差し込む荒野だった。夜になり、探偵が探しだしたギャングたちは、奇怪な森の中で殺人植物に絞め殺され、車で逃げ出した探偵は振り返ってこう悲鳴を上げる。
「わあ、森全体が追いかけて来るぞ!」
そして車は、今の今までそこになかった地割れに飛び込んでしまい、気がつくと彼はアフリカの砂漠にいたのである。かたわらには地面から飛び出した車があった。
帰国した探偵は、空港の記者会見で
「とても信じられないでしょうが、あのギャングたちが帰って来なかったら、僕の話を信じて下さい」
と去っていく。あとには、茫然自失の記者たちが残るのみ。
これが私の横山光輝短編最高傑作。
同時期に「サブマリン707」という潜水艦もの最高傑作を描いた小沢さとるがいて、この人は決してSF専門ではないのだが、手塚、横山両氏とは別の方向でSFの可能性を探ろうと努めていた。もう人々の記憶にもないだろうが、こうした非SF漫画家には手塚、横山ラインとは大いに異なる、しかし見事な作品が揃っており、近々紹介してみたいと思っている。
君は「13号発進せよ!」と「エンゼルZ」を知っているか?
コメント
No title
2022/01/27 14:45 by 陸 理明 URL 編集