2022/10/04
訂正しまーす。
前回、ニック・アダムス氏の出演作を「サンダ対ガイラ」と書いたのは、大間違い。正しくは「フランケンシュタイン対地底怪獣」でありました。彼にはもう1本東宝怪獣映画があり、タイトルもずばり「怪獣大戦争」。ラストの?まだ見ぬ未来に向かってな?でお馴染みのあれである。最後の東宝出演作「国際秘密警察 絶対絶命」の翌68年に、薬の過剰摂取により死亡。36歳。若いなあ。アメリカでの出演作に恵まれず、悩んでいたとも言われ、自殺説もあるという。主演をしてもどこか虚弱な翳のつきまとう俳優であったが、日本での撮影に際しては、極めて明るくざっくばらん。スタッフ、キャストとも打ち解けて、人気者であったという。いちばん仲の良かった土屋嘉夫から、女性への挨拶だと教えられ、スタッフ、キャストと会うたびに「儲かりまっか?」と繰り返していたらしい。来日時は妻と離婚話で揉めており、共演の水野久美を「妻と別れるから結婚してくれ」と口説いていたという。反動か。
一方、「サンダ対ガイラ」の出演俳優ラス・タンブリンは、ニック・アダムスとはは正反対。日本人スタッフ、キャストとは一切付き合わず、評判は良くなかったそうな。演技を会わせようとしない彼に、水野久美はヒステリーを起こしたとも伝えられる。二線級に留まったニック・アダムスに対し、「ウェストサイド物語」「西部開拓史」などの大作の常連であり、「青春物語」ではアカデミー助演賞にノミネートされているプライドのせいかもしれない。
しかし、後年低迷期を迎え、出演作の数も質も低下、アルコールに溺れていた彼を救ったのは、正にその日本怪獣映画であった。
アメリカ及びその他の国でSF ホラー モンスター・イベントが開かれるたびに、彼のもとへ招待状がとどけられたのである。最初は無視していたものの、あまりの熱心さに、
「僕を呼ぶのは?親指トム?に出ていたからか?」
と尋ねたところ、主催者はこう答えた。
「いいえ、?The War Of The Gargantus?(?サンダ対ガイラ?のアメリカ版タイトル)のせいです」
タンブリンにしてみれば、所詮東洋の島国で撮った、たかが怪獣映画。だが、世界中のSFモンスター・ファンがこれゆえに自分の名を忘れず、邂逅を望んでいると知ったとき、彼はきっぱりと酒を断ち、出来る限りのイベントに顔を出した。そして、72年から絶えていた映画出演を87年に再開し、2022年現在、87歳でなお活躍を続けているという。2014年にロスで再会した佐原健二は、昔とまるで違う和やかな雰囲気で語り合えたと語っている。やるねえ、東宝怪獣映画。
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